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平井和正

小学生の頃に出会って以来、ずっと読みつづけ、著作からいろいろと教えを受けている作家、
平井和正の著書の極私的レビューページです。


アダルトウルフガイシリーズ

ウルフガイシリーズ

幻魔大戦シリーズ

ハルマゲドン


アダルトウルフガイシリーズ

     
     
   

   
 

全11巻ぐらいかな。 (詳伝社NON NOBEL、今はハルキ文庫から出ている模様。上のリンクも全てハルキ文庫。)
でも、未完です。 
というか、一番いいところで尻切れになっているんで、続刊を読みたくてしょうがないんだけど、著者は自称(というか、個人的にはそのコメントを信じてる)言霊使いということで、主人公犬神明の言霊が降りてこないことには書けないとのこと。
もう既に、四半世紀以上オアズケを食らってます。

概要は、伝説の狼人間である主人公、犬神明のスーパーアクション。
満月の夜には100m5秒フラットで走り、大口径ライフルの銃弾すらエネルギーを吸収し、無力化するほどの超人的能力を発揮する。
怒りに任せ、全身を剛毛が覆った姿、に変身することもできる。(獣人現象、ゾアントロピー)
でも、新月の夜には体力が人間並みにまで落ちるという、月の運行に支配される身体。
175cm、55kg(だったかな)のヒョロヒョロの身体なのに、信じられないような怪力を示し、ステーキを何人前も平らげる。
ステーキはもちろんレア。
そしてステーキについてくる生野菜は牛にやれと突き返す肉食動物ぶり。
洒落者で、常に身だしなみを怠らないが、争闘に巻きこまれてボロキレのようになったりする。
銃の操作などはからっきしダメだが、体術は教えられなくても達人の域に達していて、ブーメランのような熟練を要する道具も、見様見真似で作り、簡単に飛ばしてしまう。
硬貨やパチンコ球を銃弾並みのスピードと威力で指先から弾き出すという「飛び道具」も披露したりする。
ハチャメチャに明るく、軽薄に見えながら、実は繊細な心を持っている。
もともとは人間と接触を拒みながら山奥でひっそりと暮らしていた超人集団、そして狼人間集団の犬神一族の裔。
母親が人間の男と恋に落ち、隠れ里を飛び出したという経緯で、人間界で生活しているという設定。
その出自のためか、人間を憎みながらも愛し、振り回され、苦悩する。
彼にかかわる、あるいは惹かれる人間たちは多いが、彼の不死身性にはついていけず、死を迎えてしまう。
彼はそのことに苦悩する・・・。

この犬神明がムチャクチャに魅力的なキャラクターで、小学四年生ぐらいに出会い、一気に夢中になりました。
底抜けに陽気なキャラクターでありながら、環境を破壊し、そして自らも破壊しつつある人間への深刻な憎悪が時節顔を見せる。
不死身といえるほどの肉体を持ちながら、かかわりを持った人間たちに見せるやさしさのために、何度も死地に陥る。
月齢に支配される能力によって、何度も死にかけながら、満月の夜に復活し、大暴れしたり。
「蛇姫様」石崎響子や、満月ではなかったとはいえ、犬神明を翻弄する中国情報部の男、林石隆など、脇役にも魅力的なキャラクターがいるのも魅力だし。
大学にいっている間に家族に処分されて、本は一冊も手元に残っていないけれど、今でも鮮明に思い出す。

「人狼戦線」では精神的なショックから月齢変身能力を失った犬神明が、密教の秘法、日輪観ならぬ、月輪観で満月期以外でも不死身性を獲得するシーンが出てくる。
それをずっと覚えていて、後に霊現象に悩まされるようになった時、日輪観をするようになった。(参照リンク

アダルトウルフガイシリーズの中期からは霊的な面を多く見せるようになっていく。
憑霊現象で死病に取り憑かれた友人を救うために奔走し、伴侶となる(?)霊能力を持った女性、雛子と出会い、ついには魔界で魔族と対決する犬神明。
かつて魔界の王だった出自を聞かされ、ある時から天使の側に変心したことを責められる。
周囲を取り巻く、かつての部下の犬人間たち。
けれどその衝撃から立ち直り、殺到する犬人間たちを一人で蹴散らす犬神明。
魔族の放った槍に体を貫かれるが、魔界に降りてきた光の球(=天使)に救われる犬神明。
現実界に戻った犬神明は、導かれるようにニューヨークへ行く。
そして、犬神明と同等の不死身性を持つ怪物と対峙し、最初の対決が終わったところで物語は中断している。
何度先を読みたいと思ったことだろうか。
でも、平井和正曰く、犬神明の言霊が降りてこないという。

犬神明のビビッドな描写に触れると、平井和正のいうこともよくわかるような気がする。
言霊というか、犬神明自身が、紙の上での人格の表現のように思えるのだ。
小説のキャラクターという存在を超えて。
なんといったらいいのか、普通の人間は肉体を持って活動するわけであるが、犬神明の場合は、ある使命を持って肉体でなく、小説という宿り木を使ってこの世に現れた存在のような気がする。(この文章を書こうとしたら突然のハングアップ。慌てて断りを入れました。)
だからこれほどまでにビビッドで、人の心を打つのだろうと思う。

ちなみに、犬神明の守護霊である、江戸時代に生きた犬神一族の男、月影は幻魔大戦に重要なキャラクターとして出てくるし、少年の設定のウルフガイシリーズもあり、こちらはつい数年前(といってしまう平井ファン・・・)に一応の完結を見た。こちらでは、アダルトウルフガイシリーズの犬神明は、神明としてほぼ同じ設定で出てきてる。

環境に対する意識を持ったのも、この小説に出会って、すなわち小学生の時からだし、霊的な分野における最初の書物がこれだった。
心霊的なテクニックや現象については、先に触れた日輪観然り、このシリーズから最初に学んだ。
そして高橋佳子さんの存在を知ったのも、このシリーズの後書きからだった。

私にとっての犬神明は偶像であり、この上ない教師であり、そして何よりも現実感溢れる存在に思えるのだ。

早く続刊が読みたいけれど、四半世紀も中断していたら、再開は期し難いかな・・・。

(19.04.27)
(19.04.29加筆)


ウルフガイシリーズ

第1期ウルフガイシリーズ
     

マンガ版ウルフガイ

第2期ウルフガイシリーズ 黄金の少女編
       

第3期ウルフガイシリーズ 犬神明編
       
       
 

アダルトウルフガイシリーズと違ってコチラは完結してます。
ただし、完結まで20年以上かかったんじゃないだろうか。
相当に長い中断期間の後、「黄金の少女」シリーズが忽然と始まり、ウルフガイ イズ バック!と大興奮に陥ったのを、昨日のことのように覚えています。

このシリーズの犬神明は中学生として出てきます。
問題児が揃う私立中学に入った風変わりな転校生。
クラス一番の美女の目を引き、不良グループから目をつけられる。
不良グループのリーダーは広域暴力団の長の息子、羽黒獰。
幼い頃から武道を習い、特に剣術はかなりの腕になっている。
そんな彼をかばう美しい女教師、青鹿晶子。
犬神明は不良グループの挑発を昂然とさえいえる態度で無視する。
リンチにかける不良グループだが、翌日には傷ひとつない顔で登校する犬神明。
犬神明に共感し、集会を開いて不良グループの追放を図ろうとする生徒たち。
集会に呼ばれた犬神明は無関心な態度を示す。
混乱する集会に突如乱入し、暴れ狂う不良グループ。
彼らに対しても取り乱すことなく、嘲弄する犬神明。
逆上した取り巻きの一人がナイフをちらつかせるが、犬神明は意に介さず、嘲弄を続ける。
緊張感と重圧に耐えかねた取り巻きが突っ込んでくるのを、鮮やかなフットワークでかわし、取り巻きは転倒した弾みにナイフを自分の腹に刺して死ぬ。
冷然と見下ろす犬神明。
羽黒獰はこれを自分への挑発と捉え、対決へと進んでいく。
止めようと単身羽黒邸に乗り込む青鹿晶子は襲われ、それを知った犬神明も羽黒邸に向かう。
陵辱された青鹿を見た犬神明は怒りに我を忘れ、日本刀を構えた羽黒と対決する。
四肢を裂かれ、腕を切り飛ばされても前進を止めない犬神明。
恐慌に駆られた羽黒が最後に見たのは、巨大な金狼の姿・・・。
組員数十人が死んだ羽黒邸に乗り込み、何事もなかったかのように処理したのはCIA。
犬神明が何者かを知る彼ら。
彼の母親、ロイス・イヌカミは犬神明が幼少の頃、彼らに囚われ、権力者たちが願って止まない不老不死研究の材料にされていた・・・。
CIA日本支部の長、ドランケは同じ不死身人間の可能性が強い犬神明の身柄を確保すると、青鹿晶子に強力な麻薬を投与して陵辱する。
死んだと思われていた犬神明は蘇り、中国情報部の不死身人間、林石隆らの助けを借りて脱出する。
だが、青鹿晶子は誰の子とも知れぬ子を宿し、それを知りつつ、犬神明は彼女を救うため、麻薬の解毒剤を求めてCIA日本支部に潜入を試みる。
林石隆の娘、虎4は彼への思慕から行動を共にする。
虎4にとっての片時の幸福、そして悲しい別れ。
罠に落ち、脱出が不可能と知った虎4は自らの体を爆薬で粉砕する。
不死身人間の血を彼らに渡さないために。
同じ頃、強化人間たちの攻撃を受ける不死身人間の隠れ家。
彼らはロイス・イヌカミの血から不死身人間になる血清を開発していた。
そして、大切な人の死を悼む狼の挽歌(レクイエム)・・・。

第1部のあらすじをかいつまんで述べるだけでこんなにも長くなってしまいました。
コチラのシリーズは当初、少年マンガの原作として書かれたらしいこともあり、アダルトウルフガイシリーズに比べて小説色が強いです。
アダルト・ウルフガイシリーズは文句なしの言霊小説という感じがするのに対して、コチラのウルフガイは、平井小説色がけっこうあるというか。
その分、自然の化身、地球の代弁者のようなアダルト犬神明が活躍するアダルトウルフガイほどの強いメッセージ性はないような気もします。
でも、ウルフガイはウルフガイ(なんのことやらわかりにくいかも・・・)。
読む者をグイグイ引きつけます。
そして、魅力的な脇役たち。
アダルト犬神明のこの作品世界への投影である神明。
CIAのエージェントから離れ、人工不死身人間たちと対決し、不死身人間の血清を手に入れて自分も不死身人間に変身するタフガイ、西城恵。
平井作品でおなじみの林石隆は、この作品では重厚な人格を持った不死身人間(虎人間)として描かれています。
虎4も、その姉の虎2も、その林石隆の娘として登場します。
このシリーズでは不死身人間たちは変身します。
神明は灰色狼に、犬神明は金狼に。
これがまたカッコイイ。
そして描写がヴィヴィッドで、特に神明の灰色狼にはものすごーく親近感が湧きます。
でも、犬神明と青鹿先生の悲恋、虎4の犬神明への思慕の描写があまりに悲しくて、第1期のウルフガイはアダルトウルフガイほど手に取る回数は多くありませんでした。
この第1期ウルフガイのテーマは飽くなき人間の欲望なのではないかと、そう思えます。
不老不死を求める権力者たちの欲望の対象にされる不死身人間たち。
かつては強靭なエージェントだったが、一発の銃弾によりブヨブヨの肉塊のような体となっても、ひたすら生に執着するCIA支部長ドランケ。
不死身人間の血清を手に入れ、自らを不死身人間にした西城恵の心理描写。
純血、人工の不死身人間が入り乱れての争闘を繰り広げる中、インディアン戦士の誇りを取り戻し、気高く生きようとするインディアンの戦士、チーフスン。
これらの人物像を通して人間の欲望について深く抉っているような気がします。

そして、長い長い中断期間を経て復活したウルフガイ第2期、黄金の少女シリーズでは、なんと、キム・アラーヤなる未知のキャラクターを前面に押し出して来た。
かなり面食らいましたが、よく読むと、彼女には狼人間の色濃い要素が。
小説としての伏線を感じるキャラクターでした。
ここでは、神明と虎2が活躍します。
アメリカ南部に舞台を置き、かの悪名高き白人人種主義秘密結社KKKとアメリカの暴走集団ヘルス・エンジェルスとの対決。
もと海兵隊員で高潔な魂を持つ警察署長、キンケイドとの邂逅。
虎2とキンケイドが恋に落ちていくさまは、かつての犬神明、そしてアダルト犬神明の両親のそれを彷彿とさせるような気がします。
強靭な肉体と不死身性、人間よりも遥かに長い生を持つ不死身人間が、なぜに弱い存在である人間に心惹かれるのか。
脆弱な肉体をもつ人間が見せる、死をも厭わぬ勇気、そして気高い魂。
そこに惹かれていく様が描かれています。
もうひとつのテーマ。
深刻な人種差別を始めとするアメリカの暗部を、このシリーズでは白日の下に晒しています。
南部を中心とする地域に根強くはびこる人種差別。
KKKやヘルス・エンジェルスという害毒のような存在がいかにしてアメリカ社会に寄生し、浸透しているか。
白人屑(プア・ホワイト・トラッシュ)という、まさに屑のような存在。
ハリウッドやマンハッタンに代表されるアメリカを、陽のアメリカとするなら、このシリーズに描かれるアメリカは陰のアメリカ。
そのアメリカの暗い部分を、平井和正は克明に描き出して見せています。
そして、このシリーズで縦横に活躍する神明。
アダルト犬神明の新作が読めない中、かなり感情移入してしまいました。
結構頻繁に灰色狼に変身し、数頭の猟犬をあっという間に蹴散らしたりするシーンは快哉を覚えます。
そしてアメリカを操る黒幕ともいわれる謎の老人、ジム・パットン。
彼が重要な狂言回しの役を演じ、最後の敵へとつながっていくことになります。

間を置かず発表された第3期、犬神明シリーズでは、虎4に瓜二つなキャラクター、BEEが登場します。
虎4に酷似した容姿のみならず、運動能力や不死身性までが。
そう、自分の体を爆破してまで、敵に不死身人間の血を与えまいとした虎4の努力は灰燼に帰したわけです。
体内に制御システムを備え、機械やPCはおろか、人工衛星をも自在に操る能力を付与されて現れた人工不死身人間、BEE。
このBEEが西城恵を捕獲(まさに捕獲という感じ)し、猫がネズミをいたぶるようにいたぶり回して見せる。
虎4も西城と相性が悪かったが、BEEはその記憶を継承していない。
さらに驚くべきは、次々現れるBEEのクローン。
BEEの命令を聞くだけのヒューマノイド・ロボットという存在。
遺伝子工学の進展により、血清しか作れなかった初期から飛躍し、クローン人間すら自在に作れるようになっていたという戦慄。
満を持して登場する犬神明。
青鹿晶子を失った衝撃から立ち直り、不死鳥結社と戦う決意を固める。
不死鳥作戦を潰すべく、最後の敵、マーの待つ酷寒のアラスカへと向かう。
結集する不死身人間たち。
BEEと西城もアラスカへと向かう。
アラスカで行われる死闘。
そして犬神明はマーと対決する・・・。
この第3期ウルフガイになって、再び犬神明が登場します。
虎4の死と、青鹿晶子の死が伏線となり、第3期ウルフガイを盛り上げています。
BEEという存在は、虎4の死がなければ起こり得ず、犬神明の成長も、青鹿晶子の死がなければあり得なかったことです。
個人的には、BEEにかなり感情移入してしまいました。
あまりにも悲しい死を遂げた虎4の意識が徐々にBEEと同一化を遂げていく様がなんとも胸をかきむしるというか・・・。
西城と最後の言葉を交わすシーンには泣けてしまいました。
それと、マーの正体。
あのようなシナリオが用意されていたことには、私は素直に驚きました。
ただ、いろいろな伏線から、読み進めるうちには何となくわかってきてはいましたが、やはり、衝撃的ではありました。
黄金の少女編で登場したキム・アラーヤ。
彼女の存在が救いだったといいましょうか。
ラストシーン、3匹の狼がアラスカの凍土を渉猟するシーンは、感動的であり、清涼感を感じます。


(19.07.25)


幻魔大戦シリーズ(幻魔大戦、新幻魔大戦、真幻魔大戦)

漫画にもなり(当初は漫画原作として書かれた)、アニメ映画化もされた平井和正の名作。
しかし、アニメ映画版はもうひとつだったけど。
プロデューサーの力量がモロに出てるから、あまり言及はしないでおく。
小説はメチャクチャ長いけど、あまり長さを意識せずに読める。
つまり、それだけ面白いということ。
地球人としては空前絶後の超能力を持った主人公、東丈を中心とした人間群像。
書評などでは、救世主小説という評価がままあったけど、そんな浅薄なものでもない。
奇跡信仰、救世主信仰に群がる人々に対する痛烈な批判と、宗教考を包含した、平井和正にしか書けない小説だと思う。

彼が高橋佳子さんに私淑し、GLAに参加していた時期に書かれただけに、東丈を中心として発足した教団に対する描写はリアルに感じる。
比較的意識が高いと思えるGLAでも、「おかげ信仰」のようなことを幹部が言い、末端の信者は単なる新興宗教として参加していたのを直接見た私には、彼がこのような描写をした意図がなんとなくわかるような気がする。

東丈は、彼の超能力に熱狂し、渇望する人たちと次第に距離を置いていく。
彼の姿はまた、キリストとも妙にオーバーラップする。
超絶的な力を持ち、それがゆえに集まる人たちに、彼の本当の意図をどうやって敷衍していけばいいのかという苦悩。
東丈や、各国に散らばる仲間たちの超絶的な力を持ってしても、幻魔の侵攻を食い止めることはできないことは、彼だけは知っている。
地球人の意識の向上が地球を救うことを、彼は知っている。
しかし・・・。
このパラドックスは、おそらくはキリストも経験しただろう。
キリストは自ら十字架に上がることで人々の啓発を促した。
東丈は、自ら姿を消すことで、人々に自ら立つことを促したのだと思う。
ほんの数人だけが彼の思いを理解し、行動する。
しかし、彼らの思いは圧倒的多数の人たちには届かない。
かのソドムのエピソードを思い起こさせる。
何人の人たちが目覚めれば、地球は救われるのか・・・。
「幻魔大戦」は中途で終わっているが、その続きは読者一人一人が紡いでいくべきものではないかとも感じる。

「真幻魔大戦」は、東丈と杉村由紀の前世やアナザーソウルを中心に展開するパラレルワールド版。
コチラは役の小角(役の行者)が東丈の前世として登場したり、あのウルフガイ、犬神明の守護霊、月影が登場したり、さらに超古代の時代でのエピソードが語られたりしてる。
この小説は、単なる作品中のアナザーワールドでなく、地球の歴史の闇に迫るものでもあるように感じる。
超古代世界で出てくる人狼族や爬虫類人、そして獣人たち。
異常なリアリティを見せると感じるのは、私だけではないだろう。
平井和正は、作品世界と前置きして、かなり高いところからのインスピレーションやメッセージを受け取っていたのだろうと感じる。
単なるエンターテイメントとして読む人にはそれなりに読ませ、わかって読む人には、それなりのものを見せる。
そんな小説であるように感じる。

新幻魔大戦は、この二つの長大なストーリーのリンク役となる小説(といってもひとつの長編小説ではある)。
月影が本格的に活躍するのがうれしい。
狼に変形してしまうのがちょっとうれしくもあり、寂しくもあり。
東丈の前世、高い精神性を獲得した人間であった由比小雪が、いかにして幻魔に憑かれたのかということを中心に、幻魔シリーズの登場人物の秘密と、パラレルワールドの秘密が示唆され、このパラレルワールド小説の重要なリンクとなっている。

幻魔大戦シリーズの意味。
読む人によってさまざまに受け取り方は違うだろうが、私は現代の霊的なメッセージのひとつだと感じる。
この21世紀に向けて、一人でも高い精神性を持つ人が増えることを狙って、高いレベルから降りてきた小説だと感じる。
平井和正がエノク書で有名なエノクの転生だといったあるGLA関係者の言が、私には信憑性が高く感じられる。


(20.01.27)


ハルマゲドン(第2次幻魔大戦)
       

東丈が失踪した形で中断した幻魔大戦シリーズの後を受け、数年ぶりに復活した幻魔大戦第2シリーズ。
東丈は出ないが、東丈の姉、東三千子が本格的に前面に出てくる。
東丈の後継者として一躍寵児となった井沢郁江の変容。
寒々とした集団と成り下がったGENKENに訪れた東三千子。
霊的な寄生生物との対決で、大きな光に包まれる中、自らの使命を認識(あるいは再確認?)したようにも思える。
“偽キリスト”の一人として成長する高鳥慶輔。
彼の下に蝟集する者たち。

このシリーズもまた、中途で終了しているが、これもまた意味のある中断であるように思われる。
著者は(というか言霊は)、あえて中断することで、その先を読者自身が考えることを要求しているように思われる。

このシリーズのテーマはいくつかあるが、GENKENの変容は、GLAの投影が多分に含まれているように思える。
霊力信仰、救世主信仰の是非も投げかけているようにも思える。

東三千子は、どうやら東丈とのツインソウルではないか。
幻魔大戦のシリーズ中にいくつか出てくる記述からも、私には、そのように思われてならない。
ある本がベストセラーになるまで、このようなことがあること自体が知られていなかったが、今になってみると、なおさらそのように思われてならない。
東三千子はその力をわざと封印して東丈の出生と登場を促し、東丈は失踪することで東三千子の封印を解く。
このシリーズの中で、二人の放つ光はまさに同質のものとしているのが象徴的である。

そして井沢郁江の変質は、その取り巻き集団の堕落に端的に描かれている。
このあたりは高鳥慶輔と軌を一にするようにも思える。
平山圭吾に対する郁江の言動には、救世主らしさは感じられない。
大いなる存在の後を歩くものの難しさも示しているようにも思える。
異言集団となった取り巻き集団や後を絶たない新入会者の幼稚さを描くことで、キリストの苦悩をも端的に描き出そうとしているようにも思える。
東三千子と井沢郁江の対峙が描かれなかったのは、これは作者(というか言霊)の、大いなる意図というべきであろうか。

高鳥慶輔の転落の軌跡は、これは今巷にあふれる“偽キリスト”の転落の軌跡を克明に描いて余すところがない。
救世主を掲げる連中にとっては、痛烈な指弾となるであろう。
彼のような人物を救世主と信じてしまった人間は不運だが、なぜそうなったかという因果も同時に描かれているところが、私が幻魔大戦シリーズを霊的な教科書と見ている理由のひとつである。

幻魔大戦シリーズは、電子書籍で新シリーズが出ているようである。(リンク
しかし、電子書籍というのが何とも手を出しにくいので、私は読んでいない。
興味は多分にあるのだが・・・。

(20.02.15)

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