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ST−警視庁科学特捜班シリーズ
今野敏のほかの警察小説と違い、コチラは少々(でないけど)毛色の科学捜査員たちを集めて作った特別捜査班、ST−科学捜査班が活躍する小説。

警察の枠内に収まらないような奔放かつ、それぞれに驚嘆するような能力を持った科学捜査員たちが集まり、多様化、複雑化する犯罪を科学的に捜査する専従班、STを作った。
トップに立つのは将来を嘱望されるキャリア警察官、百合根警視。
連絡員としてベテラン捜査員の菊川警部補。
鑑識のだれもがが一目置く法医学者で、人を惹き付ける魅力にあふれながら、本人はリーダーシップを取りたがらないいう性格の赤城。
第一化学、化学事故やガス事故の鑑定を専門とし、嗅覚が非常に発達し、微妙な臭気を嗅ぎ分ける能力を持ち、人間ガスクロ(マトグラフィ)と呼ばれ、いくつもの古武道の免許皆伝の腕を持つ黒崎。
第二化学、薬物の専門家で禅宗の僧籍を持つ山吹、音響の専門家で聴覚が極度に発達し、かすかな音さえ聞き分ける能力を持ち、極度の閉所恐怖症でその反動として露出の多い衣服を身に着けている美貌の女性・結城。
文書鑑定の専門家でプロファイリングを専門とし、秩序恐怖症により自分の周りを乱雑に散らかさずにいられない美貌の男性・青山。
それぞれに一級の能力を持ちながら、組織になじめない人間たちを一堂に集めて犯罪捜査に生かそうという発想はよかったが、それぞれに癖のあるスタッフたちは派遣された先で保守的な刑事たちや警察幹部と軋轢を起こす。
間に立ってオロオロする百合根警視。
それでも、彼らSTのスタッフは、持てる能力を駆使して難事件を解決に導く・・・。

警察小説を多く書いている著者も、まっとうな警察小説ばかり書いているとさすがに肩がコルのか、思いっきり吹っ飛んだキャラクターの集団を主人公とし、既存の警察組織に対するアンチテーゼのような集団を縦横無尽に活躍させる小説になっています。
キャラの立った主人公たちが集団でいるのでテーマには事欠かず、著者の広い知識を生かし、事件が予想外な展開を見せ、STのスタッフがそれぞれの特殊能力を生かして事件を解決に導くというのがパターンとなっています。

著者も興が乗ったのか、キャラの立ったキャラクターがファンに受けたのか(私もその一人ですが)、このシリーズも巻を重ね、スタッフ一人一人にフォーカスし、キャラクターの名前に色が入っていることから、そのテーマカラーを題名にしたカラーファイルシリーズを経て、最近は古代の伝説をテーマに取った伝説シリーズにと流れてきています。

一巻完結で、分量もそれほど多くなく、キャラが立った主人公集団が好き勝手な物言いをして権威主義的な警察幹部や捜査員たちと対立し、時にはギューギューにやり込めたりし、それでも最後には大団円を迎えるというエンディングなので、痛快エンターテイメントとでもいうような、後味のよい作品群となっています。


(20.04.17)

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