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B・D・T 掟の街 影絵の騎士
 

近未来の東京を舞台にしたアクション。
不法滞在外国人問題が深刻化し、法律の影響もあって爆発的に急増した身寄りのない混血児たち。
ホームレスと希望がないという2重の意味で「ホープレス」と呼ばれる彼らは、その多くが犯罪者となっていった。
彼らが巣食う東新宿はスラム化し、街は「B・D・T(Boil Down Town、煮詰まっちまった街、ぐらいのニュアンス)」と呼ばれ、危険地帯となっていた。
その無法地帯・東新宿を専門にするホープレス出身のA級調査員、私立探偵ケン・ヨヨギ。
ホープレス出身の有名作家から依頼された仕事は、失踪したホープレス出身の女性歌手の捜索だった。
簡単だったはずのその仕事が、ホープレスの一掃を狙うヤクザと警察の陰謀に関わることになり、ケンを次々と襲う襲撃者たち。
ホープレスの地下組織と手を結び、巨大な陰謀に立ち向かうケン。
圧倒的なスピード感で近未来の東京と外国人問題の未来を描き出した秀作アクション小説、B・D・T。
生み捨てられた混血児、ホープレスという概念とそれにより荒廃した東京、彼らに対する純粋日本人の軽蔑・畏怖・好奇。
差別に対する怒りと諦念を秘めながら、「システム」に乗っているケンとそれすら意識しないホープレスの流行作家・ヨシオ。
日本人の手に新宿を取り戻すという大義を掲げながら、利権創出に狂奔するものたち。
近未来に舞台を置きながら、「今」でも起こりうる、あるいは起こっているテーマを描き出しているところが物語に奇妙な現実感を持たせることに成功している。
実際に、いくつかのエピソードは起こりうるかもしれないと思われるところが恐ろしくもあり、面白くもある。

10年以上の時を経て発表された続編、「影絵の騎士」はそれから10年後の近未来東京を舞台にしている。
危険な街が一掃され、ホープレスギャングたちは原因不明の奇病で絶滅し、ホープレスは日本人の社会にさらに溶け込み、警察官に登用される者すら出ているという設定。
しかし、ホープレスに対する差別はさらに深いところに潜っただけでなくなったわけではないというのが、あちこちに透けて見える。
巨大な人工島に原子力発電所と映画産業が進出し、新たな娯楽と利権を提供している。
社会はTVが双方向ビジネスを発展させて既存のメディアを駆逐し、絶対的な優位を誇っている。
映画を除いて。
事件を専門とするTV番組に送られる殺人予告と犯行映像。
深く進行する巨大な陰謀。
再び、ケン・ヨヨギが陰謀に立ち向かうことになる。

10年以上の時を経たにもかかわらず、物語にスムーズに入っていけるのは、もちろん筆者の筆力ゆえだが、ホープレスの腕利き調査員という設定がよかったというのが挙げられる。
舞台装置をさらに変え、読者をまた新たな世界へと誘いながら、プロット自体はやはり「今」のことであるというのが、読者を惹きつける要素なのだろう。
この作品も大沢在昌に対する期待を裏切らない。

(20.04.25)
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