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大藪春彦

小学生から20代まで、大きな影響を受け続けた作家、大藪春彦。
当時の若者からサラリーマン層のカリスマ。
私も多大な影響を受けました。
銃器や車のメカニズムに詳しく、かなりのページ数を割いて詳細に説明することもしばしば。
そのおかげでずいぶんメカに詳しくなりました。

野獣死すべし

蘇る金狼

汚れた英雄


野獣死すべし



映画「野獣死すべし」
 

江戸川乱歩にも激賞された、正統ハードボイルドの秀作が「野獣死すべし」。
全編に、物哀しいメロディがBGMとして流れているような、乾いた文体でありながらリズム感、そして美しさを感じさせる文章。
秀麗な容貌に憂いと熱さを秘めた主人公、伊達邦彦。
徒手空拳から、手段を選ばず高みを目指す若者の栄光と挫折。
青春の香りが匂うようなハードボイルドの秀作です。

大藪春彦自身もこの伊達邦彦というキャラクターには特別の思い入れがあるようで、しばしの時を経てから続編を発表したり、他の著作に登場させたりしています。
私自身も強い影響を受けたキャラクターでもあります。
各年代で、伊達邦彦のことを意識せずにはいられません。
伊達邦彦だったらどうだろうか、などと・・・。
大藪春彦が生み出した最高のキャラクター、伊達邦彦。
あの松田優作主演で映画化もされています。


(19.07.28)

蘇る金狼


数年前に香取慎吾主演でテレビドラマ化したことでも話題になった、通俗ハードボイルドの傑作。
大藪小説の典型的な主人公といったら怒られるかも知れないが、数多くの主人公のプロトタイプのような印象がある。
ある時まで静かに牙を研いでいた主人公が時を経て牙をむく。
矛先は、汚れた手で地位と金をつかんだ後、その椅子に安住している連中。
手段を選ばず追いつめ、彼らを追い落として巨額の報酬を我が手に収める・・・。
大藪春彦の裡にあるのは、醜悪な社会の支配者たちに対する火のような怒りなのではないかと思う。
だからこそ、倦まずたゆまずにあれだけの作品群を書き続け、報われない環境にある多くの読者たちの心を癒していたのではないかと。

作品の主人公同様、大藪春彦自身もヒーローであったのではないかと、今から振り返ると思うことしきりです。
社会の支配者たちの搾取が当時よりもひどくなっている今、虐げられている人たちに読んでほしい小説ではあります。
だからこそ絶版にされているのかもしれないけど。
朝倉哲也のような人間が出現したら、搾取している者たちは震え上がり、夜も寝られなくなること必定だから。
上のリンクは、松田優作&村川透の黄金コンビで映画化された「蘇る金狼」。
大藪の作品世界を具象化するのに、松田優作ほどピッタリくる人はいません。


(19.07.28)

汚れた英雄


個人的には、大藪作品のベスト。
文庫版でも全四巻の大作。
草刈正雄主演で映画化もされている。
映画の出来は「お勧め」ではないけれど、北野晶夫のイメージにかなり近い(と思う)草刈正雄が演じたことに意味があると思う。
貴族的な容貌と抜群の体力、天性のライディングセンスに恵まれた主人公、北野晶夫がチャンスをつかみ、二輪の世界GPでチャンピオンを争うまでになる。
そのステップアップの陰には女たちの存在が。
世界的女優、大富豪の未亡人らを次々と惑わせる晶夫。
晶夫に吸い寄せられ、狂わせられる女たちは、破滅を迎えずにはいられない。
女たちの蜜を吸い、高みに上がっていく晶夫。
ついに夢見た世界チャンピオンの称号を獲得する・・・。
と、書いてしまうと簡単なストーリーなのですが、他の大藪作品とはけた違いのスケールがこの作品の最大の魅力です。
主人公が死を迎えてしまうことも、異質な点のひとつでしょう。
巨大なエネルギーを秘めているがゆえに、周囲の人々、特に女たちを引き寄せ、破滅させ、あるいは人生を変えずにはいられず、ついには自らも破滅を迎える。
若く美しいままの死、というのも、当時の大藪春彦の人生観を投影しているように思います。
年経てからの大藪春彦は、原因不明の難病に苦しむ主人公を創出したり、分搗き米を食べ、味噌汁を手作りするなどして健康に気を使う主人公を作り上げたりしていくのですが。

そして、メカについての描写は特別のものがあります。
率直に言って、大学教育のレベルよりも遥かに高いレベルの記述が随所に見られます。(一応ワタクシ、イイトコの大学の工学部卒業)
現役のメーカーの技術者たちと数多くの交流を持っていたであろうことをうかがわせます。
そして、その知識の範囲が銃と自動車だけでないというところが凄いです。
そこが、この人に触発されて出て来た亜流ともいえる作家群との大きな違いだと思います。
これだけのレベルの知識をものする作家は、今後、二度と出てこないでしょう。
若く、特別な才能に溢れた作家にしか書けない、壮大なスケールの青春小説、というのがこの小説であることを、読んだ人だけは理解することでしょう。


(19.07.28)

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