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| 柘植久慶 | ||
柘植久慶の著書のレビューページです。 フランス外人部隊格闘技教官、傭兵を経て、アメリカグリーンベレー大尉として東南アジアで活躍後、著作活動に入った最強の作家。 だけど、ただ戦うだけの人ではなく、貨幣やコイン、切手など収集品をはじめ、戦史を中心とした歴史など、さまざまな方面に深い知識をもち、 それを著作の随所に披露するだけでなく、特定の分野に関する著作も多く残しているマルチタレントとしてのイメージが私にとっては強いです。 対人戦闘のテクニックには目を見張るものがあり、徒手格闘に関しても、いくつもの示唆を得ました。 小説に関しては、やはり気力が充実し、吐き出すものが多かった初期のものが質が特に高いという印象があります。 出版社の要望か、パターンが固定化してきた近年のものよりも厚みがあるという印象があります。 近年でいうと、野戦の指揮官としての経験を投影した戦史研究や戦史上の人物紹介などに秀逸なものがあると感じます。 柘植久慶の作品の中から好きなものを紹介します。 蜂田迅シリーズ 逆撃シリーズ |
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| 蜂田迅シリーズ | ||
初期の柘植久慶の著作群の最高傑作だと思います。 というのも、著作における彼の投影がこのシリーズの主人公、蜂田迅ということで、作品に力があるのが、読み手にすぐに伝わります。 蜂田迅には、柘植久慶自身の能力を、恐らくはそれほど誇張なく付与し、またエピソードも柘植久慶自身のエピソードが挿入されているとしています。 戦闘シーンの克明さ、実戦の非情さも余すことなく書き、作中の登場人物は必然の、あるいは不慮の死を遂げていきます。 そしてあちらこちらにちりばめられる彼の豊富な知識が、アクション小説の分野としては、日本の作家離れした重厚さを作品に付与していると感じます。 国際情勢に精通し、さらに実地の戦闘にも精通、それも正規戦(軍隊同士の戦闘)だけでなく非正規戦(ゲリラや傭兵、特殊部隊など、軍服を着ていない集団の戦闘)にも精通していないと書けない作品群だと思います。 上のリンクは時系列順になっていると思います。(参考リンク) この中で一番よかったのは零の記号か、クーデターか。 当時のソ連軍に侵入し、スペツナズ将校に化けて抑留されたスパイを救出しようとするスリルを存分に味わわせてくれる「零の記号」。 著者が再三強調する個としてのロシア人の善良さは、ドストエフスキーなどの小説を読んだ身には、素直にうなずけます。 それとソ連軍の大雑把さと執拗さ。 アフガンなどで証明されてはいますが、彼の作品世界の中で描かれると、改めて胸落ちするものがあります。 「クーデター」はインド洋の某国を舞台に、クーデターを実行する主人公の活躍を描いています。 かの有名なF・フォーサイスの名作、「戦争の犬たち」の柘植久慶版といえる小説です。 これも著者の経験が存分に注入され、素晴らしく面白く、また、勉強になる小説となっています。 ジャーナリスト出身のフォーサイスは実際にクーデターを実行しようとして失敗したが、柘植久慶は成功するでしょう。 シミュレーション小説としてこの小説を読むと、その理由がわかるかと思います。 著者はこれに類する経験をしたか、あるいは幾度も戦略立案をやったにちがいないと思えるものです。 シリーズは違いますが、これの日本バージョンもあります。 最後のドンデン返しと虚無。 これが戦闘の本質なのかもしれません。 最後の2作は、40代後半、50代に入った主人公の戦いを描いている点が、アクション小説の中では異質かも知れません。 しかし、柘植氏自身の運動能力、戦闘能力を正確に投影している主人公の戦いと見ると、なかなか興味深いです。 (19.12.26) |
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| 逆撃シリーズ | ||
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蜂田迅シリーズもよかったけど、私としてはこれがイチオシ。 全30作にもなる巨大シリーズですが、特によかったのが初期の4部作、関ヶ原と大坂の役編です。 ともすれば石田三成と徳川家康の戦いに矮小化されがちな関ヶ原、そして淀君と大野冶長対徳川家康という図式に陥りがちな大坂の役。 柘植氏は、宇喜田秀家と明石掃門、そして宮本武蔵にスポットを当てて戦いを描いています。 いわゆるIFノベルなので、戦闘の経過は史実に即していません。 けれども、戦闘シーンは過去の作家が誰も書けなかった迫真のレベルで描かれ、読むものを、これが史実だったのかもとさえ錯覚させるほどの出来です。 宮本武蔵の強さの秘密を、著者の視点から洞察した記述が随所に挿入されているのも興味深いです。 宮本武蔵が関ヶ原に参戦したのは確実、大坂の役に参戦したのは、あり得るというのが今のところの通説のようですが、彼が存分に暴れたらどうなるかというのを、作品世界で描き切っていると感じます。 「五輪書」についての解説書も出している筆者、そして近接戦闘や徒手格闘の経験も豊富に持つ筆者ならではの視点は非常に興味深く、勉強になります。 主人公は歴史小説を得意とする作家。 剣道や乗馬もよくし、戦史研究者でもある彼がふとしたことから関ヶ原前夜の大垣にタイムスリップしたところから物語は始まります。 古今の戦史を研究した主人公は、軍師格として宇喜田秀家軍に参加、現代人の知識で関ヶ原を戦い、そして17年後の大坂の役を戦い切ります。 宇喜田秀家を仮名武将として参戦させて。 勝ちを知る武将たちの賛同を得ながら自らの作戦が三成、そして淀君や冶長に否定される主人公の苦悩と、悲壮感を漂わせながら、負けるとわかっている戦いに、それでも己の名誉のために戦う戦国武将たち。 想像力とヒロイズムだけの薄っぺらなIFノベルとは一線を画した出来の小説です。 関ヶ原と大坂の役を経験した主人公は以後、武田氏に参陣して三方ヶ原の戦から長篠の戦を戦い、以後、ナチスドイツ、ナポレオン、ハンニバル(カルタゴ)、楠正成、フビライ・ハーン(元寇)、そして三国志の三英傑の陣営に参陣し、自らの可能性と歴史を書き替える夢を追いつづけ、三国志の三英傑にそれぞれ参陣して、歴史への旅にピリオドを打ちます。 個人的には、小説として面白かったのは武田信玄編までかなと思っています。 もう少し伸ばしてナチス編までがパワーがあったように思います。 関ヶ原・大坂の役編の宮本武蔵、宇喜田秀家と同様、武田信玄編では信玄の実弟、逍遥軒信繁と敵方のヒーロー、本多忠勝が軸になり、信繁を川中島の戦での戦死から回避させて、以後、仮名武将として活躍させます。 信玄編では、武田軍の戦術展開をヴィヴィッドに描いているのが印象深く、有名な三方ヶ原の戦で、徳川軍をトリックにかけた手管が詳細に描かれています。 このあたりは実戦を数多く経験した筆者の力量によるところ大だと思います。 信玄編での長篠の戦での逆転と史実に沿ったどんでん返し、そして知己を得た武将たちが悲壮に突っ込んでいく様が感動的です。 ナチスドイツ編では、ヒトラー替え玉説を下敷きにし、当時のOKW(国防軍最高司令部)の問題点を浮き彫りにするとともに、ナチスについて、著者の視点から描いているのが、日本人には新鮮に映ることと思います。 また、重要な脇役として、著者が別の著作で英国のマクドナルド将軍が謎の死を遂げた後、ドイツ軍に参加した際に名乗ったとしているフォン・マッケンゼン将軍が登場しています。 ヒトラー替え玉説も、氏が別の著作で詳細に検討しています。 確かに、一時期を過ぎる前後で、ヒトラーの眼光や容姿が変わっているのがわかるので、この説にも少なからず説得力があると感じます。 また、ハンニバルシリーズでは、他のシリーズでは無名の人物に成り代わっているのに対し、主人公がハンニバル自身として参加しているのが変わったところです。 この逆撃シリーズは、著者自身が、有名な戦いで、自分だったらこうするという戦術展開を行っているのも特徴です。 戦史上の戦いの考証と、著者自身の戦術展開の考察は別の著作で詳述しているが、それとセットで読むと、この逆撃シリーズはさらに楽しめることと思います。 (19.12.26) |
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